美しい東北の自然に囲まれながら、古くからある伝統行事が今なお多く根付いている秋田県。今回はそんな秋田県を、イラスト共に紹介していきたいと思います。
男鹿のナマハゲ
秋田の代表的な伝統行事と言えば「男鹿(おが)のナマハゲ」。
ナマハゲ行事は集落によって衣装やしきたりも変わりますが、今回この記事では男鹿市真山地区のナマハゲを紹介していきたいと思います。
ナマハゲ行事は夕方から始まります。ナマハゲ役の人々が会場に集い、「ケデ」と呼ばれるワラ製の衣装にお面、ナマハゲに捧げる料理が準備されます。
そしてお面を身に付けたナマハゲに神酒を捧げた後、「真山神社」という、十代景行天皇時代によって建てられたとも伝えられる、ナマハゲゆかりの神社に向かい、入魂の神事を行います。
こうして心身ともにナマハゲと化した後、神社境内の「歓喜天堂」に詣でたら、各二匹一組となって家々を巡ります。
家に着くと、先立が家主にナマハゲを家に入れて良いか確認します。病人がいる家や、その年に不幸があった家などは、ナマハゲは玄関先で門踏み(足踏み)をして次の家に向かいます。
許可が下り、家に上がるとナマハゲはすぐに四股(しこ)を7回踏み、そこから家中を歩き回りまわり、「怠け者はいねが。泣く子はいねがー」などと大声を出します。
主人は料理や酒でナマハゲをなだめ、もてなし、ナマハゲは添えられたお膳に座る前に5回四股を踏んでから、家族や田畑の様子などを主人に尋ねます。
その後ナマハゲは来年の家族の無病息災や豊作を祈って、席を立ち、三回四股を踏み、また家を歩き回ります。最後に「来年もまた来るぞ!」と言い残し、次の家に向かいます。
各家庭を巡り終えたナマハゲが「歓喜天堂」に戻り、着ていたケデを柱や「歓喜天堂」近くの齢1000年を超える榧(かや)の木に巻き付けてお堂に詣でたら終了です。
「なまはげ館」
秋田県男鹿市にある「なまはげ館」には、秋田県内・海外含む、なまはげに類似した民俗行事で使われている面の展示があるほか、「なまはげ伝承ホール」のスクリーンでは、男鹿のナマハゲ習俗を紹介する映画「なまはげの一夜」を上映しています。
さらに「なまはげ館」近くにある「男鹿真山伝承館」では「なまはげ習俗学習講座」を行っています。
「男鹿水族館GAO」
さらに男鹿市には「男鹿水族館GAO」という水族館があります。ここではホッキョクグマやゴマフアザラシ、キタイワトビペンギンや秋田県の魚である「ハタハタ」の他、多くの海で暮らす生き物を間近で観ることが出来ます。
水族館に宿泊できるイベントも開催されており、夜の館内体験ツアーや手作り教室などに参加が可能です。また「タッチプール」ではサザエやヒトデ、ナマコの触れ合い体験も行われています。
「鵜ノ崎海岸」
上のイラストは同じく男鹿市にある「鵜ノ崎海岸」(うのさきかいがん)です。「日本の渚百選」に選ばれており、快晴の日には鏡のように水面に映る美しい風景を見ることができることから、秋田の「ウユニ塩湖」とも言われています。
イラストに描かれている球体の岩は「小豆岩」です。形が愛らしく見えることから「おぼこ岩」とも呼ばれます。
満潮の時は海に浸かってしまいよく見えませんが、春先の大潮の時にはイラストのように全体を観ることができます。
秋田県と秋田犬
「秋田犬の里」
秋田県大館市にある観光交流施設、「秋田犬の里」。
かの忠犬ハチ公が大館市出身であることから、ハチ公が主人を待ち続けた大正時代の渋谷駅をモデルとして建築されました。
この施設では秋田犬のルーツや特徴が展示されており、ロシアのスケート選手アリーナ・ザギトワ選手に贈られた秋田犬「マサル」をモデルにしたぬいぐるみを160体以上も積み上げたぬいぐるみタワーは人気のフォトスポットだそう。
「秋田犬展示室」では、秋田犬との「ふれあい体験」はありませんが、本物の秋田犬を見ることができます。また、秋田犬の里では、旧小坂鉄道の廃線を走る「手こぎトロッコ」に乗って、線路を走る体験ができるほか、「お土産コーナー」には秋田犬ぬいぐるみなど様々な秋田犬グッズがそろっています。
※なお、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2022年10月現在秋田犬展示室には入室することが出来ません。しかし、隣接する秋田犬ミュージアムからガラス越しで見学することは可能です。
「秋田犬会館」
こちらも秋田県大館市にある施設です。
日本の犬種団体では唯一の博物館となっています。秋田犬保存会創立50年を記念して建設されました。秋田犬及び日本犬の絵画や秋田犬の歴史を綴るスナップなど、秋田犬の生態や歴史などの資料が展示されている施設です。
会館前には忠犬ハチ公の銅像「望郷のハチ公像」があります。
秋田と花火
「大曲の花火」
約70万人がこの行事をみるために秋田県大仙市に集まると言われる、「大曲(おおまがり)の花火」。正式名称は「全国花火競技大会」で、選出された28社の花火業者の中から、花火の技を競う大会です。
昼花火の部では五号玉五発、夜花火の部では十号玉二発と創造花火(丸形ではない花火)が使われます。現在、全国で昼花火を行っているのは「大曲の花火」だけです。
また最も優秀と認められる花火を作った花火師には内閣総理大臣賞が贈られます。
この大会では花火が1800発使用されることもあるそうで、選ばれた花火師の方々が作る花火は圧巻の迫力です。
「花火伝統文化継承資料館ーはなび・アムー」
開催地である秋田県大仙市大曲通町の近くには「花火伝統文化継承資料館ーはなび・アムー」があります。
ここでは 花火の歴史や花火づくりの一連の工程を学べる他、花火工場バーチャル見学や自分で作った花火をスクリーンに打ち上げ体験できる「はなび創作工房」、全国的にも珍しい4面マルチシアターで、迫力のある花火の映像を体感できる「はなびシアター」など、あらゆる常設展があります。また企画展示では、打ち上げ現場の舞台裏や花火と大曲の街の変遷などが展示されています。
秋田と温泉
「乳頭温泉郷」
秋田県にある温泉で人気を博しているのがこの「乳頭温泉郷」。
「乳頭温泉郷」とは十和田・八幡平国立公園の「乳頭山」ふもとにある七つの湯のことを指します。
七つの湯は「鶴の湯」「妙乃湯」「黒場温泉」「蟹場温泉」「孫六温泉」「大釜温泉」「休暇村乳頭温泉郷」で構成されており、この七湯を巡れば万病に効くと言われています。
乳頭温泉郷最古の歴史を持つ「鶴の湯」では、「白湯」「黒湯」「滝の湯」「中の湯」と、4種類の泉質の異なる源泉があり、また「妙乃湯」では「銀の湯」「金の湯」という2種の温泉があるなど、それぞれの温泉でお湯の違いを楽しむことができます。
また、温泉郷内各宿のフロントにて宿泊者限定で購入できる「湯めぐり帖」と言う帖を持っていれば、7軒の温泉を各1回ずつ入浴が可能です。(1年間有効)
「後生掛温泉」
秋田県鹿角市にある「後生掛温泉」。
ここは約300年前から、病気やケガの療養の為の湯治湯として親しまれており、『馬で来て足駄で帰る後生掛』と伝えられています。
現在でも「湯治棟宿舎」が設置されており、療養のための湯治を行うこともできます。
また温泉には『箱蒸風呂』や『打たせ湯』、『神経痛の湯』に『露天風呂』、その他に温湿布美肌効果のある『泥風呂』、気泡が吹き出す『火山風呂』、天然の蒸気を使った『蒸気サウナ』、の七つの湯があります。
さらに宿泊者限定で、地熱を利用して床を温めるオンドル『もえぎ』や、四季折々の景色を眺められる『ブナの湯』を利用でき、一つの温泉施設で複数の湯を楽しめることができます。
「玉川温泉」
秋田県仙北市の田沢湖、国立公園内にある「玉川温泉」。
こちらの温泉もまた古くから湯治の温泉として有名です。また「玉川温泉」では湯治をする際、温泉に常駐している看護師の方に「湯治相談」ができるため、安心して湯治を行うことが出来ます。
温泉には「源泉50%の湯」や「源泉100%の湯」に「蒸気場・箱蒸し湯」、「打たせ湯」の他、浴場内では源泉を2倍に希釈した温泉水の提供や「屋内岩盤浴」があります。
横手とマンガとかまくらと
「横手市増田まんが美術館」
日本初の「マンガ原画」をテーマとした本格的美術館です。秋田県横手町出身の漫画家、矢口高雄氏が横手市に寄贈した全原画 45000点を筆頭に、日本を代表する漫画家180名以上のマンガ原画を収蔵・展示しています。
また、デジタル化した原画を検索して閲覧できる大型のタッチパネルや保存されている1話分の原画を全て見ることができる「ヒキダシステム」が設置や、他二階通路にはマンガの登場人物の台詞を集めた「名台詞ロード」、マンガとコラボしたメニューを注文出来る「マンガカフェ」、2万5000冊以上のマンガを閲覧できる「マンガライブラリー」など一日中マンガを楽しめる施設となっています。
企画展なども行っており、期間限定で人気マンガの原画展示や企画展で展示されたマンガとのコラボカフェなどが開かれています。
「横手のかまくら」
かまくらは伝統行事?
現在では子供の雪遊びのひとつとして人気の「かまくら」ですが、本来は水神様を祀る約450年続く、横手の小正月の伝統行事です。毎年2月15・16日の夜に行われ、かまくらの中に子供達が入り「はいってたんせ(かまくらに入ってください)」「おがんでたんせ(水神様をおがんでください)」と言いながら、甘酒やおもちを振る舞います。
現在では秋田県横手市に「ふれあいセンターかまくら館」という施設があります。
ここのかまくら室は、常にマイナス10度ほどに保たれており、横手の雪を使って作った本物の「かまくら」を年間通して体験することができます。
秋田県能代市の伝統行事
「天空の不夜城」
「天空の不夜城」は江戸時代から行われている秋田県能代市の七夕行事です。
日本一の高さとなる24.1mの城郭型灯籠「愛季(ちかすえ)」と高さ17.6メートルの「嘉六(かろく)」の2基が能代の街を練り歩きます。イベントは8月2日・3日に行われます。
また8月2日に同時開催として「こども七夕」という田楽と呼ばれる灯籠を頭にのせた子供達を先頭にし、太鼓、笛に続いてアニメキャラクターなどをかたどった灯籠も街を巡ります。
「嫁見まつり」
「嫁見まつり」とは、前年の旧暦4月中の申(今年は令和4年5月21日 土曜日)以降に結婚した新妻たちが良縁を感謝し、末永い幸せを祈るため、打掛(結婚式などで主に着られる着物)を纏い行列を整え、「日吉神社」に参詣する行事です。
秋田市新屋日吉町にある「日吉神社」は、祭神が縁結び・良縁の神として祀られており、古くから新妻や女子児童が正装で神社に参拝していたそうですが、現在では幸せな結婚を願う未婚女性も参加しているそうです。
秋田グルメ
「由利本荘(ゆりほんじょう)」わらび粉
京都で秋田県由利本荘市のわらび粉を使った、わらび餅専門店「みつや」が今年(令和4年2月)にオープンしました。
秋田県由利本荘市の三ツ方森で作られているこのわらび粉は、最近まで作り方が失伝していたようですが、2010年、三ツ方森集落で行われた「根花餅(わらび餅)づくり再生・継承プロジェクト」をきっかけに三ツ方森集落、近隣の大台集落、石沢地域をはじめ、県職員、市職員や大学生が協力し合い、平成23年の「三ツ方森茶屋」というイベントで「わらび粉」は復活を遂げました。
この「わらび粉」を作るには大変手間の掛かる作業が必要であり、1日にとれるわらび粉は270グラム程となります。多くの人の思いによって手間暇掛けて作られた由利本荘の「わらび粉」、ぜひ一度ご賞味ください。
「道の駅かづの あんとらあ」のきりたんぽ
鹿角市にある「道の駅かづの あんとらあ」では日本三大ばやしの一つである「花輪ばやし」の屋台が展示されている展示館に、鹿角市が発祥の地と言われる「きりたんぽ」作り体験ができる、「手作り体験館」、数量限定できりたんぽ鍋が食べられる「きりたんぽ館」や、団体専用のレストランなど、様々な施設が充実しています。
鹿角市観光の際は是非お立ち寄りを。
「佐藤養助商店総本店」の稲庭うどん
秋田県湯沢市にある「佐藤養助商店総本店」。
ここでは秋田県名物として有名な「稲庭うどん」を食べることができるほか、稲庭うどん手作り体験をすることができます。手作業で行われる工程を実際に体験でき、また後日、完成品を自宅に送ってもらうことも可能です。
稲庭うどんは、コシのある平べったい細麺が特徴です。「日本三大うどん」の一つで、農林水産省より「農山漁村の郷土料理百選」に選ばれています。
まとめ
いかがだったでしょうか?この記事では秋田県に存在するあらゆる伝統行事を多く紹介しました。
代々少しずつ形を変えながらも守られている秋田県の伝統。古き良き日本を体験することができる秋田県、ぜひ一度行ってみてください。
今回ご紹介した場所はこちら!【秋田県】001
この記事のイラストは大阪芸術大学の「コミックプロデュース論」を受講している学生により制作され、マンガデザイナーズラボの代表兼、同学の客員教授・吉良俊彦と講師・石井聡の監修のもと掲載しております。
ライター:津村明日香さん
デザイン:デザイン学科3年 田邉楓花さん
デザイン学科3年 西村拓史さん
デザイン学科2年 向優理子さん
映像学科2年 中嶋八雲さん
デザイン学科2年 中村太一さん
キャラクター造形学科2年 筒井丈翔さん