日本には、さまざまな仏像が存在しており、人々はその美しさに今も昔も魅了されています。そんなとき仏像の基本的な知識を得てから鑑賞すると、さらに多くの魅力を感じられることでしょう。この記事では、仏像の種類について詳しく解説します。仏像の歴史やポーズ、各宗教の仏像や設置場所などについても紹介しますので、参考にしてください。

 

仏像とは

もともと仏像は、仏教の祖であるお釈迦様の姿を表した像で、崇拝して信仰を広めるために作られました。その後、阿弥陀如来や観音菩薩などの仏や仏教神、宗教・宗派の創始者の仏像が作られるようになりました。

現在では、悟りを開いた人や信仰の対象をかたどった像も仏像と呼ぶようになっています。

 

   仏像の歴史

仏像の起源地は、古代インド時代の1世紀後半~2世紀頃、当時のガンダーラ地方、現在のパキスタンが有力です。多くの文化が混ざりあうガンダーラ地方では、顔立ちのはっきりした仏像や「仏足石(ぶっそくせき)」と呼ばれるお釈迦様の足をイメージしたレリーフが作られていました。現在のような仏像は、4世紀頃から栄えたグプタ朝時代から作られています。

日本に仏像やその文化が伝わったのは、飛鳥時代です。国内最古の仏像は、「一光三尊阿弥陀如来像」(長野県善光寺)や「飛鳥仏像」(奈良県明日香寺)といわれています。

 

   仏像の素材

仏像の素材は、作られた国や時代により異なりますが、金属・漆・木・石・土が主流です。インドや中国、朝鮮半島では石の仏像が多いといえます。日本では、飛鳥・奈良時代の仏像の多くは金メッキ仕上げの金属製です。しかし、平安時代になると、木製の仏像が作られるようになります。日本の仏像は、歴史的にも木材が多く使用されました。

 

   大仏とは

大仏とは、巨大な仏像のことをいい、高さが一丈六尺(約4.85m)よりも大きな仏像を指します。一丈六尺(いっすんじょうろく)が大仏の基準となった理由は、お釈迦様の身長や仏や菩薩が化身した身長という説からきているようです。

 

   日本の三大大仏

日本の三大大仏は、奈良の大仏、鎌倉の大仏、京都の大仏です。奈良の大仏は、東大寺にあり日本の大仏で一番有名な大仏といってもよいでしょう。また、鎌倉の高徳院にある大仏は、建造された経緯は不明ですが、自然災害で倒壊してから屋外に安置されたといわれています。

 

京都の大仏は、方広寺に建造するものの、倒壊や焼失で現存していません。京都の大仏に代わる候補は、兵庫大仏や岐阜大仏などがあります。

 

 

仏像の種類

仏像には、どのような種類があるのでしょうか。ここでは、5つの仏像について解説します。

 

   如来(にょらい)

如来は、悟りを得た人や真理に到達した人という意味があり、一番位の高い仏像です。如来の大きな特徴は、「螺髪(らほつ)」というパンチパーマ風の髪型でしょう。如来には、釈迦如来、大日如来、薬師如来などがあり、人々を苦しみから救うために存在しているといわれています。

 

   菩薩(ぼさつ)

菩薩は、如来の次に位の高い仏像で、如来の意思に従い、さまざまな姿に変身して、あらゆる方法で人々を助けるといわれています。菩薩には、観音菩薩、弥勒菩薩、地蔵菩薩などがあり、宝冠や胸飾をふんだんに身につけたり、女性のような姿をしていたりするものが多いといえます。

 

   天(てん)または天部(てんぶ)

天、または天部は、仏教を守る神様です。仏教の信仰を妨害するものから、如来や菩薩、人々を守ります。天の姿は、自然現象や抽象的な対象物や半身半獣が多いようです。大黒天や弁財天などの七福神、仏教世界を守護する広目天・多聞天・増長天・持国天の四天王、梵天や帝釈天が該当します。

 

   明王(みょうおう)

 

明王は、如来や菩薩に次ぐ位で、密教から生まれたといわれています。密教とは、ヒンドゥー教が、仏教に取り入れられて発達した宗教です。明王は、仏教の教えを踏みにじる敵と戦うために、武器を持ち、髪を激しく逆立たせて、牙が生えるなど、恐ろしい姿をしています。明王には、代表的な不動明王をはじめとして、愛染明王や孔雀明王がいます。

 

   その他の仏像

 

仏像には、仏以外の仏像もあり、仏と同様に徳が高く、守護神としての役目を担っています。例えば、羅漢や祖師の仏像です。羅漢は、悟りを開いた高僧「阿羅漢」の略称で、お釈迦様の弟子では一番位が高いといえます。「十六羅漢」や「五百羅漢」を仏像として祀っている仏教寺院も多いです。

 

祖師は、仏教を広めるために尽くした人物や、各宗教・宗派の創始者のことで、弘法大師や鑑真和上像が有名な仏像です。

 

しばらくの間、奈良の大仏の頭部なしの雨ざらしの状態が続いて、1709年にようやく奈良の大仏は再建されます。

 

 

   仏像のポーズにはさまざまな種類がある

仏像の手のポーズは印相、または手印とよばれており、さまざまな種類があります。ここでは、仏像の印相について解説します。

   施無畏印(せむいいん)と与願印(よがんいん)

施無畏印と与願印はセットで使われることが多く、奈良の大仏のポーズです。施無畏印は「畏れることはない」という意味を持ち、右掌を胸の前に構えて中指を軽く曲げています。与願印には願いを叶えるという意味があり、左掌を上に向けて中指と薬指を軽く上げています。仏像の印相で、一番有名といえるでしょう。

 

 

   定印(じょういん)

定印も有名な印相で、精神を集中して瞑想に入る姿を表しています。両掌を上に向けて、左手の上に右手を重ねて、親指の先を合わせたポーズです。阿弥陀如来の定印では、人差し指と親指で輪を作っているケースもあります。鎌倉大仏の印相も、阿弥陀如来の定印と同じです。

禅定印(ぜんじょういん)や法界定印(ほっかいじょういん)と呼ばれることもあります。

 

 

   智拳印(ちけんいん)

智拳印は、金剛界大日如来だけができる特別な印相で、最高の智慧を意味して、胸の前で左手を握り、立てた人差し指を右手で握るポーズです。 インドでは、右手は清浄の手、左手は不浄の手とされます。そのため、右手は仏、左手は衆生を表し、仏の智慧が衆生を包み込むことを示しています。

 

   来迎印(らいこういん)

来迎印は、阿弥陀如来が西方極楽浄土から、亡くなった人を迎えに行くときの印相です。施無畏印・与願印に似ていますが、親指と人差し指で輪を作る部分に違いがあります。来迎印は、生前の行いにより9つのランクに分けられます。浄土真宗では、摂取不捨印(せっしゅふしゃいん)といい、いかなる人々も見捨てないという阿弥陀仏の慈悲の心を表しています。

 

 

   説法印(せっぽういん)

説法印は、お釈迦様が仏教について説法をする際の姿を表し、転法輪印(てんぽうりんいん)とも呼ばれています。右手は立てて親指と人差し指で輪をつくり、左手は掌を上に向けて親指と中指で輪をつくり、両手を胸の前に近づけます。釈迦如来や阿弥陀如来の印相です。

   降魔印(ごうまいん)

降魔印とは、お釈迦様が悟りを開く際に、妨害してきた悪魔の集団を降伏、退散させたポーズです。右手の人差し指を地面に触れる様なポーズだったため、触地印(そくちいん)とも呼ばれています。日本の仏像では、奈良にある東大寺の弥勒仏坐像が該当します。

 

 

   仏像のポーズにはさまざまな種類がある

仏像は種類によって、仏教寺院や仏壇に設置する場所が異なります。ここでは、本尊と脇侍の場所や意味について解説します。

 

   本尊

本尊とは、仏教寺院や仏壇の中央に祀られている最も大切な仏像や掛け軸のことです。本尊は、宗教の信仰の中心として祀られますが、宗教・宗派により祀る仏像は異なります。詳しくは、後述する表を参考にしてください。

 

   脇侍

脇侍とは、本尊の左右に控える存在で、大部分が菩薩・明王・天です。本尊とともに仏教の教えを広めるだけでなく、本尊を補佐する役割も担っています。脇侍も宗教・宗派により異なります。

   まとめ

仏像たちは、過去の戦火や災いなどを乗り越え、現在も大切に残されています。なぜ造られたのかなどの成り立ちや歴史を知ると実際に訪れた際により楽しめるはずです。

 

 

 

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